応天の門」に登場する人物の一覧表です。漫画「応天の門」での人物設定と、史実上の人物像に関しても説明しています。登場人物の背景を知れば、さらに物語が深読みできますよ!
あ行
在原 業平 (ありわらの なりひら)
「伊勢物語」の昔男とほぼ同一視される業平ですが、業平は父方をたどれば平城天皇の孫・桓武天皇の曾孫であり、母方をたどれば桓武天皇の孫にあたるという、血筋からすれば非常に高貴な身分です。しかし天皇の血筋が別系統へ移ったこともあり、臣籍降下により在原朝臣姓を名乗り、不遇の時期を過ごします。

美男の代名詞として有名ですが、歌人として素晴らしい才を持ち、それは道真も認めるところ。「古今和歌集」に30首、「勅撰和歌集」には87首が収められていて、六歌仙・三十六歌仙の一人です。歌を詠むことが恋の手管であった時代、恋を語る素晴らしいテクニックの持ち主、単なる優男というだけではなかったわけですね。
「応天の門」に登場する業平は38~39歳辺りの想定でしょう。清和天皇女御、後に皇太后となった藤原高子や、伊勢斎宮快子内親王など、高貴な女性との禁忌の恋で名を馳せた業平。高尊の生まれでありながら反体制的貴公子というイメージがありますが、長いものには巻かれておかねば的処世術も垣間見え、この先の藤原との絡みが楽しみです。
興道名継 (おきみちの なつぐ)
典薬寮の医博士であり、内薬正。のちに典薬頭となり、侍医となります。島田忠臣の友人であり、忠臣の薬の知識を買ってか、典薬寮に来ないかと声を掛けたりしていました。
実直な人柄で医に対する姿勢は真摯なものがあり、師である前典薬頭・出雲峰嗣の信頼は深く、峰嗣が研究した「不老不死の仙薬」も、医の志のないもの手に渡らぬよう配合は秘密にされましたが、名継なら配合比が分かると文に記されているほど。
か行
吉祥丸(きっしょうまる)
藤原是善の長男。弟の阿呼(道真の幼名)の才能にいち早く気付き、菅原の家の繁栄の為にと気を配る優しい兄でした。父に命ぜられ藤原家に近づきますが、藤原国経・遠経兄弟の狩の犬に咬まれ、狂犬病に罹り亡くなってしまいます。この時、阿呼の身を案じ「来るな!」と遠ざけるために投げた土器が当たり、いまも道真の額に傷として残っています。この時の兄の言葉が自分への拒否の言葉として深く残り、道真は記憶を封印していたのかも。
史実的には、道真は三男として記録に残っていますが、兄二人の記録は何もないため、夭折したのであろうと思われます。
紀 静子 (きの しずこ)
文徳天皇の更衣。紀名虎の娘。文徳天皇の東宮時代に入侍し、寵愛を受けました。惟喬親王や斎宮恬子内親王の母。惟喬親王は父天皇に期待されましたが、静子が紀氏出身で後ろ盾を持たないため、藤原良房の娘・明子が生んだ皇子惟仁親王への忖度が働き、皇太子になれませんでした。
【応天の門】では若き頃に業平にちょっとした「貸し」があることで、斎宮の危機を救う手立てに利用しようとするのですが…。
紀 豊城 (きの とよき)
兄の紀夏井からその勝手気ままな行いを激しく責められ、伴善男のもとに身を寄せている居候の身。性格は傲慢無礼、皆に疎んじられています。やがて藤原との権力争いの火種となっていく人物。ひと癖もふた癖もありそうな不気味な存在です。
あの良房に矢を放ったり、多美子姫の略奪を企てたり、はたまた道真ともめたりと、何かと騒動を引き起こします。
「応天門の変」では豊城は伴善男・中庸親子らと共に首謀者とされ、流罪となります。
紀 長谷雄 (きの はせお)
「応天の門」に登場する紀長谷雄は、文章生を落第し続けているにもかかわらず、勉学をサボり双六などにうつつを抜かす、ちょっと女好きな憎めないキャラに描かれています。業平の妻の親戚という設定で、道真を何かと巻き込み事件解決へと引っぱり出していく役どころです。

実際の長谷雄はと言えば、道真と同い年ながら力ある後援者に恵まれず、文章生になったのはようやく32歳の時だったそうです。その翌年877年には、道真は33歳で文章博士となっており、このあたりから実際の親交が生まれたのではないでしょうか。
さて、実際の長谷雄はなかなかにユニークな人物だったらしく、14世紀に描かれた『長谷雄卿草子』という長谷雄を主人公とした絵巻に、鬼と双六をした話が残っています。「羅生門に棲む鬼と双六の勝負をし、勝った長谷雄は鬼から絶世の美女をもらい受ける。しかし百日のうちは女と契ってはならぬという鬼との約束を破ったために、絶世の美女は水となって流れさった」という伝奇的なお話、恐らくこれから「双六と美女」「怪異に出会いやすい」というキャラが設定されたのでは? 我慢できなそうなところとか(笑)
881年に長谷雄は37歳にしてようやく文章得業士となりました。道真が遣唐使の大使に任命されたとき、長谷雄は副大使となりました。残念ながら遣唐使は道真によって廃止となるわけですが、二人の間には強い絆があったのかも知れません。道真の人柄に強く惹かれ、道真が流罪となった後も何かと支援していたそうです。醍醐天皇の侍読も務めた長谷雄、「竹取物語」の作者だとも言われています。遅咲きではあったものの、その才能は世に認められていた人物だったのですね。
小藤(こふじ)
長谷雄が懸想していた、藤原親嗣の屋敷に奉公していた下女。藤原親嗣の折檻から彼女が逃げ込んだ先が、昭姫の遊戯場でした。貴族の屋敷勤めはこりごりと、昭姫の店で働くことに。

さ行
斎宮・恬子(やすこ)内親王
第31代伊勢斎宮。父は文徳天皇、母は更衣・紀静子(業平の妻の姪)。同母兄弟に惟喬親王がおり、業平の親戚筋になります。859年、清和天皇の即位にともなって斎宮になることが占いで決められ、861年に伊勢に下る、と記録に残っています。
生まれたのは定かではありませんが、848年ごろと推測されていますが、「応天の門」では10歳で伊勢に下ったとあります。伊勢に下ったのは861年と記録に残っているので、この物語の時は未だ14歳あたりのはずです。
『伊勢物語』では斎宮になった彼女と業平の恋物語になっているので、14歳と38歳の恋。
古来より業平と斎宮の一夜の契りで生まれた子供を、伊勢権守で斎宮頭だった高階峯緒の子、茂範の養子とし、それが後の高階師尚であるといわれているそうですから、斎宮がお子を産まれたのはかなりの確率で事実なのかも、ですね。
島田 忠臣 (しまだの ただおみ)
道真の父・是善に師事し、その願いによって道真の教育に当たることになります。娘・宣来子は道真の許婚。菅家で道真の幼少期のお守り役として仕え、是善から非常に信頼され後継者へと望まれますが、是善の真意をくみ取れないまま断ってしまいました。
幼い道真がすでに、自分よりはるか遠くを見ていることに傷つき、自分の才を唯一のものとして徴用してくれる基経に仕えることになります。藤原基経の命で暗躍していますが、道真のことは深く心にかけているようです。これから後、基経との関係で、道真ともどう関わっていくのか気にかかるところです…。
史実としては、菅原是善にその才を愛された漢詩人。道真は忠臣に漢詩を習い、11歳で初めて漢詩を作ったと『菅家文草』に記されています。860年頃から藤原基経の近習となり、忠臣の漢詩をこよなく愛した基経との間には、漢詩のやり取りを交わすなど、主従関係を超えた個人的にも親密な間柄であったようです。
門人であり、後に娘婿となる菅原道真との交際は生涯に渉って続き、どちらかが地方にある際にも手紙による遣り取りがしばしば行われていました。その中には「阿衡事件」などの政治問題に関する遣り取りなども遺されています。忠臣が病死すると、道真は「今後再びあのように詩人の実を備えた人物は現れまい」と嘆き悲しみ、道真との縁で忠臣との交際を持った紀長谷雄も「当代の詩匠」と評してその死を惜しんだそうです。
島田 宣来子 (しまだ のぶきこ)
道真の師・島田忠臣の娘で、道真の許婚。道真を心から愛し、道真が得業生になったら正式に夫婦になるという約束を楽しみにしています。わずか12歳ながら、道真並みの観察力を持ち、双六や偏つぎなどもかなりの実力を示します。
とにかく焼もち焼き。道真の動向が気になって仕方ないのですが、得業生になるまでは会わないという道真の言葉に、不満一杯。白梅を使って様子を探らせたりしていますが、天真爛漫ながら利口な、なかなかのお転婆娘。白梅同様愛されキャラ。
昭姫 (しょうき)
都の遊技場を束ねる女主人。昭姫とは才女として名高い漢の三国時代の詩人の名に由来し、唐からやって来た渡来人です。交易商人でもあり唐物に詳しいので、唐物がかかわる事件の際には道真が相談に訪れるようになり、さまざまな事件解明に一役かうことになります。もとは唐の後宮の女官でした。
伝法なものの言い方もしますが、情にもろい任侠肌で姉御という感じ。
菅原 是善 (すがわらの これよし)
道真の父で文章博士。当代随一の文人として多くの文人と交わりがあったが、俗世間の事柄には疎く風月を鑑賞して漢詩を吟じた、清廉な人物。仏道を崇めて人々を慈しみ、殺生を好まなかったと言われています。臨終の際には、梅の季節に自らの法要を営むことのみ遺言したとか。
「応天の門」の中でも、やはり穏やかな人柄が描かれており、幼い清和帝の侍読として、厚い信頼を得ています。藤原権門の恐ろしさを知りつつも逆らえずにおり、長男・吉祥丸を藤原家に取り入る道具にしようとして死なせることになってしまったことを深く悔やみ、道真には藤原とはかかわって欲しくないと願っているのですが…。
菅原 道真 (すがわらの みちざね)
「応天の門」に登場する道真は、恐らく文章士となった18~19歳の想定。道真は幼少より詩歌に才を見せ、11歳で初めて漢詩を詠んだと言われています。物語では幼名は「阿呼」とされており、参議・菅原是善の三男として、「管三」という通り名で呼ばれています。

書物(主に唐伝来の漢学)により知識量はものすごく、周囲の誰もが認める秀才。鬼や物の怪など信じておらず、全ては何らかの物理的な説明がつくとする徹底合理主義者、かと思いきや…。業平に「最後に正しいものが勝つと、本気で思っているんじゃないだろうな?」と言われ、己の弱さを自覚していくことになります。宮仕えという理不尽な世界を嫌悪しつつ、いやおうなしに巻き込まれていく…。
理知の世界に生きているようで、その実とても情緒的なものを内包している、そんな若者の危うさが、後の道真の「怨霊」となる所以かもしれませんね。勉学のために遣唐使として党に渡ることを夢見ている道真が、やがては遣唐使の廃止を決定するのですから、これからの描かれ方が気になります。
清和帝 (せいわてい)
文徳天皇の第4皇子ながら、外祖父・藤原良房の力で、わずか生後8か月で東宮となります。9歳で即位、幼少の帝の外戚として良房が権力を握ります。母は良房の娘・明子。この物語では現在12~13歳です。幼くして母・染殿の后と引き離され、母に疎まれているのではと思いつつ、母の病を案じています。
やがて多美子や高子をはじめ多くの女御・更衣を迎え、数多」の子孫をなしますが、ほとんどが臣籍降下して清和源氏を名乗りました。源頼朝、足利尊氏をはじめ武家源氏の祖でもあります。
染殿 (そめどの)
藤原良房の娘・明子。清和天皇の生母ですが、生まれて間もなく皇子とは引き離され、父・良房らによって幽閉されています。皇子に会いたい一心で抜け出し、帝の寝所へ忍んで会いに行くのでした。

『古今集』に父の良房が明子を桜花と詠んだ一首「年経れば 齢は老いぬ しかはあれど 花をし見れば 物思ひもなし」が伝わっており、大変な美貌の持ち主だったといわれています。865年ごろから物の怪に悩まされるようになったと『今昔物語集』『平家物語』『宇治拾遺物語』などの書かれており、うつ病を患っていたようです。
明子の存在が藤原の摂関政治への大きな要因のひとつとなりましたが、本人は病のためずっと引き持った生活のまま、72歳という長命を保ち崩御しました。もし、「応天の門」のように生涯幽閉されていたのなら、気の毒な方ですね。
た行
橘 広相 (たちばなの ひろみ)
大内裏八省院内大学院に勤める学者で道真の師。道真の父・是善の元で学んだこともあり、今でも懇意にしている。道真が師事している数少ない人物のひとりで、心優しい人物。
史実的には、若くから学才が認められ31歳で文章博士になっています。藤原高子の産んだ皇子・貞明親王が皇太子に立てられると、その東宮学士に任じられており、藤原基経と親しい関係にあったとされています。しかしそののちに起きた宇多天皇と基経の政治紛争(阿衡事件)の要因となり、へそを曲げた基経から処分を求められますが、それを諫めたのが道真だったそうです。
この時代、東宮学士になるということは、そのまま政に大きくかかわることを意味するのですね。菅原是善もそうでした…。
タマ
家族思いでよく働く純真な娘。昭姫の店の仕立物の仕事をもらっていて、道真たちと知り合うことに。この娘、大宅鷹取(おおやけの たかとり)の娘として出てきました。大宅鷹取はのちに「応天門の変」で、娘を殺害された復讐のため伴善男・中庸親子を放火犯として密告した人物です。
12巻65話で、このタマが伴家の清縄とのもめごとに巻き込まれ、左大臣の従者土師忠道が目を付けられるという災難に発展していくのですが…。
伴家の従者・生江恒山と伴清縄が大宅鷹取の娘の殺傷事件にかかわったとして、厳しく拷問・尋問されます。その過程で鷹取の件のみならず、応天門の放火についても自供を始めたことで、伴善男へ追及の手が及びます。
これから伴家とのかかわりが出てくるようですね。このタマちゃんが殺害されるのかと思うと…。
伴 中庸(ともの なかつね)
大納言・伴善男の息子。道真の母とは縁続き。小心者の貴族として描かれていますが、業平が開いた塩焼の宴で道真の毒抜きの手腕を見て、父・善男の命を助けてくれるようにと道真を引っぱり出します。そしてそれが、政にはかかわるまいと思っていた道真が、藤原と伴の対立の渦中に入っていくことに繋がっていくのでした。
「応天門の変」では、善男・中庸親子が応天門に放火した罪に問われ、隠岐へ流罪となります。これからの動きに注目。
伴 善男 (ともの よしお)
大納言。藤原良房に次ぐ朝廷の実力者。藤原氏に代わり実権を掌握しようと狙っており、良房に先んじて玉虫姫をいち早く入内させようと画策。また道真には命を助けられますが、自分に弓引くものとみなすことにも。

人物としては狡猾で悪賢く、傲慢で人と打ち解けることなく、性格は残酷であったと「日本三大実録」に記されています。のちの「応天門の変」で放火の罪を問われ罪状否認のまま死罪、罪一等を赦されて最後は伊豆へ流罪となりました。

な行
寧(ニン)
唐からの密航者。調役の役人から身を護るため殺害し、逃走している途中、長谷雄に助けられ昭姫の店にかくまわれる。唐の後宮の宦官だったが、滅びゆく唐を後にして日本へ密航してきたようです。昭姫にとっては恩人にあたる人。
道真の才を認め「すべきことを見誤るな」と諭すのでした。
は行
白梅(はくばい)
森本の翁に仕えていた女房。翁の元で漢学を学び、玉虫姫の代わりに文のやり取りなどをしていました。翁の死後は、その漢学の知識を買われて道真に仕えることに。道真父子の書倉の整頓・管理を任されています。性格は素直で心配性。業平に心ときめかせています。

情にもろいなかなかの愛されキャラで、長谷雄とある意味良いコンビ。道真&業平、白梅&長谷雄って感じですかね(笑)。
藤原 有貞(ふじわらの ありさだ)
藤原南家、右大臣・藤原三守の七男。反藤原北家のメンバー。
『日本三大実録』によれば、「権貴の家柄であったがそれを誇ることがなく、意に逆らう人がいても、必ずしもその人を避けたりはしなかったという」と記されています。
藤原 国経(ふじわらの くにつね)
藤原長良の長男、基経、高子の兄。物語では愚鈍な兄として描かれています。
実際は勅撰歌人として、「古今和歌集」「続古今和歌集」に1首ずつ収められています。「今昔物語」に若く美しい妻を酔った勢いで左大臣・藤原時平に被けものとして差し出し後悔した、という逸話がのっています。それをもとに息子の立場から描いたのが、谷崎潤一郎の『少将慈幹の母』です。
藤原 高子 (ふじわらの たかこ)
「応天の門」に登場する女性の中で、ひときわ強烈な個性を放つ藤原高子は、左大臣・藤原良房の姪です。良房の権勢拡大の策として、年若い帝に入内することになっています。842年生まれですが、物語の中では21歳となっていますね。
17歳の時に五節舞姫となり、9歳の東宮(後の清和天皇)の許婚となります。この時からすでに入内が決まっており、藤原権門の大事な持ち駒でした。しかし11歳の時に29歳の業平と駆け落ちを決行しており、結局は兄たちの手によって連れ戻されてしまい、以後軟禁状態となっていました。『伊勢物語』の「芥川」の段に鬼に喰われた姫、は彼女がモデルと言われています。

藤原家の姫として生まれ、やがて入内するであろう姫をさらった業平は、これより東国へ下り不遇の時代を過ごすことになり、この駆け落ちは高子の入内が遅れる要因になったとも言われています。高子が入内したのは25歳、当時としては大変遅い結婚です。3年後に皇子(後の陽成天皇)を生み、やがて皇太后という最高位に上り詰めることになります。
物語の中では、今でも業平と想いを寄せあい、時折文を送り合っている間柄として描かれています。大胆な行動を躊躇いもなく起こすことがあり、そこに業平との駆け落ちを決行した芯の強さと、権力抗争の道具として生きねばならない哀しさが垣間見え、これからどう描かれていくのか楽しみなところです。入内後の業平との密会シーンなんかも、期待したい!
「応天の門」では「たかこ」と名乗っていますが、平安時代では「こうし/たかいこ」と呼ばれていたかと思います。
藤原 常行 (ふじわらの ときつら)
藤原北家、右大臣・藤原良相の嫡男。父・良相は良房の弟。良房の養子となった基経とは従兄弟であり、同じ北家の中での権力闘争にやがて敗れることになります。道真とは百鬼夜行騒ぎで出会い、彼の才を見抜くと同時に、その鋭さに危惧を感じるのですが…。

妹の多美子はやがて清和天皇の女御として出仕。藤原権門の恐ろしさをよく知っており、妹・多美子の身を案じる優しい兄でもあります。
『今昔物語』に、「夜の外出を避けるべき百鬼夜行の夜に、思いをかけている女の許へ出かけたため、百鬼夜行に出会い鬼に喰われそうになったが、常行の乳母が兄弟の阿闍梨に書いてもらった尊勝陀羅尼を常行の服の襟に入れておいたおかげで、鬼は常行を捕らえる事ができず、常行は何とか家に逃げ帰ることができた」という逸話が残っています。
物語に出てくる「おばば」ですね。ではさしずめ『尊勝陀羅尼』は道真?(笑)
藤原 遠経(ふじわらの とおつね)
藤原長良の次男、基経、高子の兄。物語ではこちらも、国経と同様に愚鈍な兄として描かれています。「伊勢物語」の中で業平が姫(高子)と駆け落ちした時に、姫の兄弟たちが追いついて取り戻したらしいのですが、この物語では遠経と国経がその役を担ったとしてあり、高子の心に深い傷を与えました。
藤原 親嗣 (ふじわらの もとつぐ)
左大臣・藤原良房の従弟。権力に物言わせ、下女や女官たちに折檻をくわえるのが楽しみというゲス貴族。自分の仕業をごまかすために、下女の行方不明をでっちあげますが…。道真に鬼退治されてしまいます。
藤原 基経 (ふじわらの もとつね)
中納言・藤原長良の三男として生まれましたが、時の権力者で男子がいなかった叔父・良房に見込まれてその養嗣子となり、英才教育を受けて育ち権力へのすさまじい執着をみせています。高子の同母兄ながら、その冷徹で酷薄な性向は、高子をして「叔父・良房よりも恐ろしい」と言わしめているほど。
この物語の時点では左近衛中将ですが、やがて「応天門の変」を機に、権力への道を猛進。父・良房亡き後、高子の産んだ皇子が陽成天皇となると、外叔父として摂政となり朝廷の権力を掌握します。しかし妹・高子との確執は続き、やがて陽成天皇を退位へと追いやることとなります。やがて阿衡事件を機に、史上初の関白として君臨するのですが…。

この阿衡事件では道真の師の一人である橘広相に因縁をつけた基経を、道真が戒める形となって、それ以降基経と宇多天皇との間に確執が生じ、基経を諫めた道真へと宇多天皇の信が移り、基経の死後、道真が重用されるようになります。そしてそれが、やがて藤原権門と道真の軋轢を生み、大宰府へ流罪という流れに繋がっていきます。そこまで連載が続いて欲しいですね!
藤原 良近(ふじわらの よしちか)
藤原式家当主。反藤原北家のメンバー。物語では酔って牛と相撲を取るような武骨な貴族として描かれています。
『日本三大実録』によれば、「姿や態度に見るべきものがあり、清らかで美しいと評判であった。学はなかったが政治の理論に優れていたため立身した。また、腕力が人並み外れて強く、ある時酒に酔って牛車に乗った際、戯れて同乗の者に「私が牛を進めないようにしてみよう」と言って、手で車の床を押さえつけて力を入れて動かないようにしたところ、牛が四本の足を突っ張って進もうとしても前に進まなかったという」といったエピソードが残されています。
藤原 良房 (ふじわらの よしふさ)
嵯峨天皇に深く信任され、皇女を降嫁されるという特別待遇を得た、藤原北家を率いる時の実力者です。妹の順子が仁明天皇の后となり、一気に昇進していきます。良房の娘・明子は文徳天皇の女御となり入内、娘の明子の産んだ皇子が、今上帝・清和天皇です。わずか8か月の孫を東宮として擁立させてしまう策謀家であり、妨げとなるものは一族のものであろうが、情け容赦なく切り捨てる人物として描かれています。

幼い清和天皇の外祖父として太政大臣となります。この物語のタイトルにも関連のある「応天門の変」を機に天皇から摂政を任じられ、摂関政治に礎を築くことになります。「応天門の変」によって全権力を掌握した良房は、その年の暮れに姪の高子を入内させるのです。
ま行
源 融(みなもとの とおる)
嵯峨天皇の第七皇子。兄は左大臣・源信。反藤原北家の主要メンバー。風雅を愛する風流人ながら、政への執着には強いものがあります。この物語では40歳くらいです。ほぼ業平と同世代。一見天然ボケ風で、しかし鋭い洞察力を持っています。

史実では、「応天門の変」で伴善男が失脚し、高官が相次いで亡くなったこともあり、その後急速に昇進。そして太政大臣・藤原良房が亡くなると、左大臣に任じられました。ですが陽成天皇即位に際し、藤原基経が外戚として自分をさしおき摂政となったことで確執が生まれます。しかしのちに関白となった基経が亡くなると、左大臣に復帰しており、なかなかにしたたかですね。
六条河原院を造営したことで「河原左大臣」と呼ばれ、世阿弥の能「融」の元となりました。紫式部の「源氏物語」の光源氏のモデルの有力候補だそうです。六条院ですしね。勅撰歌人でもあり『古今和歌集』『後撰和歌集』に各2首ずつ載っているので、やはり風流人だったようです。光源氏のモデルになった方?と思ってみると、また見え方違ってくるかも?
源 能有(みなもとの よしあり)
先帝・文徳天皇の皇子、母が伴氏出で身分が低かったため、早くに皇位継承からは外れ臣籍降下、源姓を名乗りました。道真とは同い年の18歳。大納言・伴善男の縁者。
20年後に生き延びていれば、年よりはいなくなり、自分の子供たちも成長している、世はどう変わるか分からない、と道真に語っています。その時に自分の名が呼ばれ必要とされた、何をすべきかを考えている、という大局を見る眼を持った大らかな人物。
都 言道(みやこの ことみち)
大内裏八省院内大学院に勤める学者で、道真の師の1人。豪放磊落。山歩きが好きで、自然か学ぶべきものは多くあると、座学のみではいかぬと道真を指導する。道真の知識量には一目置いているが、書だけではなく実際に学び取ることが大事と説く。

史実では、860年に文章生、869年に対策に及第。つまりこの【応天の門】に言道が登場する864年は、まだ文章得業生だった。そして870年に道真が受けた対策の際には、その問答博士を務めた。
872年に言道から良香(よしか)へ改名を請い、許された。
漢詩に秀で歴史や伝記にも詳しく、名声は高かったが、貧しくて財産は全くなく、食事にも事を欠くほどであったという。立派な体格をしており腕力も強かった。富士登山の歴史的記録と重要な「富士山記」を残している。
逸話が多く残されていて、人物的に興味深い人だったようで、異界や神域と触れ合う話が多い。これらの点から【応天の門】でも山中で天女に会う(笑)物語が織り込まれている。
「文章博士・都良香が羅城門を通った時、「気霽れては風、新柳の髪を梳る」と漢詩を詠むと、楼上から「氷消えては波、旧苔の鬚を洗ふ」と詩の続きを詠む声がした。良香がこの詩のことを菅原道真に語ると「下句は鬼の詞だ」と言ったという。(『十訓抄』より)
良香が晩夏に竹生島に遊んだ際に作ったという「三千世界は眼前に尽き。十二因縁は心裏に空し。」の下の句は竹生島の主である弁才天が、良香に教えたものであるという(『江談抄』)
道真との逸話も多い。道真が十一才の春、父是善卿が今宵の状景を詩作せよと命じたところ、道真が即座に秀逸な漢詩を作詩し周囲を驚かせた。これを聞いた師の都良香は、その英才を歎じて「我が才到底菅公に教える力が無い」と師範を辞退し、その後は学友の交りをされたと伝えられているという。
普段勉学に追われていることから、とうていうまく射ることはできないであろうと、良香が道真に弓を射させてみたところ、百発百中の勢いであった。良香はこれは対策及第の兆候であると予言し、実際に道真は及第したという(『北野天神縁起』)この時の問答博士が言道(良香)だったわけだ。
『本朝神仙伝』「都良香の事」第24 都良香は菅原道真に官位を追い抜かれ、怒って辞職し、山に入って消息を絶った。百余年の後、ある人が山の窟で都良香に会ったが、顔色は昔と変わらず、壮年のごとくだった。
や行
八千代 (やちよ)
内薬司の女医で25歳。女医は博士にはなれず、内薬司にいられるのは25歳までという規定があるため、今年で内薬司の務めが終わるそうです。親切な美人女医。
ひょんなことから宣来子と知り合いになり、「菅家に来れば漢学も学べるし、これからは産婆も必要」と宣来子に言われ、「その折にはぜひ」と約束しているので、この先も何らかの関わりがありそうです。

山科宮 (やましなのみや)
仁明天皇の第4皇子・人康親王でしたが、病気を理由に出家して山科宮と称しました。親王は琵琶の名手で、隠棲理由の病気は両目を患った事だろうと言われています。江戸時代には座頭・琵琶法師等の祖とされました。



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