【応天の門】藤原基経はモリアーティ?

主な登場人物

【応天の門】では、ホームズが道真、そしてワトソンが業平だとすると、やはりモリアーティは基経でしょう! モリアーティの片腕のモラン大佐は忠臣?! 気になる関係図、これからどうなる!

モリアーティと基経の共通点

「ホームズ最後の事件」でシャーロック・ホームズは「彼は犯罪界のナポレオン」と称賛したのが、ジェームズ・モリアーティ。ロンドンという大都会の半分の悪事、ほぼすべての迷宮入り事件はモリアーティの仕業、とまで言っています。

モリアーティは表の顔は優秀な学者、21歳にして素晴らしい科学論文を書くほどの、高い知的能力をもった元数学教授であり、そして裏の顔はロンドンに暗躍する悪党一味の統領として、手下を使い狙った獲物は必ずしとめる犯罪者です。

では、藤原基経はどうか?漢詩を愛し、才ある者を利用する術に長けた基経、表向きは有能な政治家、そして裏では毒殺・襲撃、あらゆる手段を駆使して権力を掌握しようとする野心家。自らの手を汚すことなく、手下を使いその策略を成功させてきたわけです。

犯罪知能に優れており、自らの手を汚さず犯罪を成功させる術を持つ二人。そしてもう一つ、モリアーティ教授の片腕を務めていた人物がモラン大佐、そして基経の片腕が忠臣。最後はホームズとモリアーティの直接対決となり、復活したホームズが片腕だったモラン大佐と対決するんですが、道真VS基経、ここに忠臣がどう絡むのか、これが最大の楽しみです!

藤原基経は中納言・藤原長良の三男として生まれましたが、時の権力者で男子がいなかった叔父・良房に見込まれてその養嗣子となり、英才教育を受けて育ち権力へのすさまじい執着をみせています。高子の同母兄ながら、その冷徹で酷薄な性向は、高子をして「叔父・良房よりも恐ろしい」と言わしめているほど。彼の数々の策略、ご紹介します!

策略 その壱 染殿の狂気

染殿・藤原明子は基経の義父・藤原良房の娘、清和天皇の生母ですが、幽閉の身となっています。うつ病を患っていたとも言われる染殿、それが表に出て一番困るのは父である、太政大臣良房。そのあたりは基経、しっかり弱みとしても握っています。

染殿の病が知られぬよう幽閉し、暴走しないように抑えお混んでおく、そのためには媚薬を使い僧侶たちを使い、そのせいか染殿の意識はさらに混濁したものになっていきます。義父・良房が実の娘を道具として扱うのを見て、自分は道具にされまい、使う側になると思ったのかも…?

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策略 その弐 百鬼夜行

都に出没する百鬼夜行…、それこそが基経が生み出したもの。人々が怪異を怖れ敬っていた時代、その恐怖をうまく逆手にとって操ったのが基経と言えます。

禁制の毒薬を都へ持ち込むために編み出された百鬼夜行、正体は藤原家子飼いのいわゆる外人傭兵隊、異国の言葉を操り指揮をとるのは島田忠臣でした…。島田忠臣ほどの知性ある人間を意のままに操ってしまえるのは、藤原の権力だけではなく、基経の「おまえは特別」という甘言だったのかも…。

やがて、この百鬼夜行の毒薬は、伴善男毒殺未遂事件へと繋がっていきます。

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策略 その参 伴善男毒殺未遂

藤原北家の権力の権力盤石なものにするためには、染殿(皇母)と清和天皇という組み合わせだけでは足りない、妹でもある高子が清和天皇の皇子を産むこと、それは必須条件でした。

そして他氏排斥。伴家を排斥し、そして源氏の勢力を削ぐ、そのための策が伴善男毒殺でした。しかしこれは道真の解毒によって未遂として終わります。むろん、この時実行役を務めさせられた女官は口封じのため殺害されました。

伴善男毒殺未遂事件のネタバレ・深読みはこちら

策略 その四 藤原多美子毒殺未遂

高子姫入内をさしおき抜け駆けされた多美子姫入内の話は、藤原良房・基経にとって寝耳に水の話。良房・基経親子は多美子へと魔の手を伸ばします。

鼠や呪詛の藁人形を使って恐怖を煽り、多分鼠退治の為にという触れ込みで毒薬を持ち込む予定だったのではないかと思うのですが、白梅が道真に教えられた草を燻す方法で鼠退治をしてしまったので、女官が直接多美子の膳に毒をし込むことに。

これも偶然、白梅が女官にぶつかって膳がひっくり返り、それを食べた鼠が即死したことで発覚。多美子毒殺は未遂に終わりました。道真、結構邪魔してますね。

やはり実行役の女官は口封じされましたが、息子を人質に取られて強要され、あげくに始末されるなんて気の毒です。

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策略 その五 多美子姫襲撃未遂

毒殺が未遂に終わったからと言って、それで諦めるような基経ではありません。次は物の怪を使う、つまり子飼いの傭兵部隊を百鬼夜行と見せかけ、多美子姫の行列を襲撃する計画でした。

襲撃されるのを想定しての道真の策に、まんまとハマった形でしたが、この時は突然乱入した紀豊城のお陰で、多美子姫の行列と百鬼夜行の行列が混乱し、襲撃は失敗に終わりました。

多美子姫襲撃未遂事件のネタバレ・深読みはこちら

史実では

この物語の時点では左近衛中将ですが、やがて「応天門の変」を機に、権力への道を猛進。父・良房亡き後、高子の産んだ皇子が陽成天皇となると、外叔父として摂政となり朝廷の権力を掌握します。しかし妹・高子との確執は続き、やがて陽成天皇を退位へと追いやることとなります。

妹の高子姫とは非常に折り合いが悪かったらしく、陽成天皇を暴君としては退位を迫り、従兄弟である時康親王を推挙、光考天皇として擁立します。この時、嵯峨天皇の皇子である源融が自分にも権利があると主張しますが、臣下に下がった者に資格はないと退けてしまいます。やがて阿衡事件を機に、史上初の関白として君臨するのですが…。

この阿衡事件では道真の師の一人である橘広相に因縁をつけた基経を、道真が戒める形となって、それ以降基経と宇多天皇との間に確執が生じ、基経を諫めた道真へと宇多天皇の信が移り、基経の死後、道真が重用されるようになります。そしてそれが、やがて藤原権門と道真の軋轢を生み、大宰府へ流罪という流れに繋がっていきます。

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