「応天の門」 在原業平はワトソン?

主な登場人物

「応天の門」のサブ主人公・業平は38歳。道真がホームズ役として推理を繰り広げていく際に、ワトソン役として行動面の補佐が多い役回り。相変わらずのモテ男ブリですが、やや中年の翳りもそこはかとなく見え、そこがまた魅力かも? 女性遍歴数多あれど、その人生に大きな影を落としているのは、やはり高子姫でしょうね。

密会シーン

まぁ、だいたい登場からして密会シーンです。方違えで不在の夫・中将殿の奥方と、いきなり中将が返って来たのではないかとビクビクしつつの密会、しかし怖いのはこの奥方の六条殿の一言。

「いつもどなたのことを考えていらっしゃるの?」

お互い危険を冒しての密会なんだから「うわの空で抱くんじゃないわよ」と(笑)。そういうのって、敏感に伝わっちゃうんでしょうねぇ。そのあたり、業平も胸に刺さるものありでしょうか。「女人は怖い。美しく柔らかいだけかと思えば、刃物のように真実を突きつけてくる」 すでに、彼の胸には高子姫という棘が深く突き刺さっているのですから、柔らかいだけの相手を選っていくしかないんでしょうけど。

業平はむろん妻帯者です。妻は紀名虎の子有常の娘。紀名虎の娘・静子が生んだ文徳天皇の皇子惟喬親王と大変に親しかったそうですが、文徳天皇は惟喬親王を皇太子にしたかったのに藤原良房に押し切られ、良房の娘・明子の皇子(後の清和天皇)が皇太子となり、やがて紀氏などの有力氏族が退けられていくわけです。

「忘れては夢かとぞ思ふおもひきや雪ふみわけて君を見んとは」古今集の中にある業平の和歌。皇位継承の望みが立たれた惟喬親王が出家すると、こんな歌を送って慰めています。

詳しくはここで↓ 第1巻あらすじ

藤原高子との駆け落ち

そういう紀家と縁が深い立場でありながら、藤原高子と駆け落ち騒ぎを起こしたんですね。

「いいの、連れて行って 業平」「どこへでも 連れて行って」(第2巻)

このシーン、好きですね~。11歳の高子姫と29歳の業平。『今昔物語』や『伊勢物語』などに高貴な女性との密通事件として残されています。

「むかし、男ありけり。女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうして盗みいでて…」有名な「伊勢物語」六段。この時、深窓の令嬢であった高子姫は「露」を見たことがなく、業平に「あれは何?」と問いかけるシーンがあります。鬼に喰われてしまった姫(実際は兄たちに連れ戻された)を嘆き悲しみ、業平が詠んだ歌が「白玉かなにぞと人の問ひし時 露とこたへて消えなましものを」 私もあの露のように、はかなく消えてしまえばよかった…。11歳と29歳の恋物語…

その思い出を「月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身一つはもとの身にして」(古今集巻十五)と詠んだ業平、これは高子姫の入内を知った後に詠まれたとか。手の届かぬ所へ行ってしまった高子への、絶唱といえる名歌ですね…。

「応天の門」がちょうどその10年後、高子姫の入内の話題で盛り上がる設定ですね。十年たってほとぼりも冷めたし、若い帝なら何とでもなると、藤原良房は虎視眈々と次の帝、さらにその次の帝の外戚となるべく暗躍中。

業平と高子は今も密かに文を交わす中なのですが、厳しい軟禁生活の高子に会う術はありません。道長の女官・白梅や道長から、わずかに様子を伝えきき… 「高子殿、笑っておられましたよ」という道長の言葉に深い慰めを得るシーン、これもいい表情してますよね。高子姫からの唐墨の匂いを嗅いだりして、さすが匂いフェチ男。一度嗅いだ女性の香の匂いは忘れないとか。まぁ、昔は香と体臭がその人独自の香りを放っていたんでしょうから、忘れがたいものであったに違いありませんが。

詳しくはここで↓ 第2巻あらすじ

高子姫との一瞬の遭遇。宮中での騒動の時に、見過ごしにすれ違う瞬間、お互いを認め合うシーン。設定では高子姫21歳となっていますから、あの駆け落ちから10年後の遭遇です。切なさ満載です。

私的には、入内して後の密会なんて、今後に期待しちゃうんですが。光源氏だって后の藤壺女御のもとに通ってましたし。逢わせてあげたい高子姫と業平殿!

詳しくはここで↓ 第5巻あらすじ

空約束の常習者

さて、出奔した道真を探して明石に行けば行ったで、そこには昔通った女・清川に遭遇。しかも、清川が仕えていた姫に通う業平と深い仲になった、という設定。「いつか迎えに行く」なんて空約束までしていた業平、言い訳しようとするとすかさず、バッサリ。

「私がお慕いしていたのは、気まぐれで移り気で、お美しい少将様。どうか私の憧れを奪わないでくださいまし」

「つまんない男にならないでよね」って一言で釘刺し。やはり女人は過去よりも今なのですね~。

詳しくはここで↓ 第3巻あらすじ

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女の恨みもやむなし

憧れの山吹の姫様を振った憎き奴というので下男に付け狙われ、とんだ呪い騒動を引き起こされた業平ですが「女人がらみとなると思い当たる節があり過ぎて、皆目わからぬ」そうで、道真から「ほんとに最低!」と言われます。

当の山吹の姫はと言えばしっかり別な男の子を産んでいたりして、この時代男も女も奔放に恋の駆け引きをしていたんですね。

『三代実録』では業平の伝を「体貌閑麗,放縦不拘にして,略才学無く,善く倭歌を作る」と記しています。美男で放縦な業平は官人として必要な漢詩文の学識はないけれど、良い和歌を作ったそう。紀貫之は「業平はその心あまりてことばたらず。しぼめる花のいろなくて,にほひのこれるがごとし」と、業平の余情豊かなことを讃えました。

詳しくはここで↓ 第4巻あらすじ

【応天の門】4巻 ネタバレ&みどころ 平安歴史ミステリー
平安歴史ミステリー【応天の門】第4巻ネタバレ&みどころです。業平が反藤原の集いに道真を招きますが、「群れているだけで何かをした気になっている集まり」に過ぎないと、痛烈に批判。道真と業平の関係に隙間風が吹き始めます。その頃、都の大路を百鬼夜...

イタリア男並みの愛想よさ

幼いころから美童として騒がれ、今もどこへ行っても人気で、ばば様にだってモテてしまう(笑)。白梅の憧れの公達でもありますね。通りをゆけば大騒ぎ。声をかけられれば、にっこり。

白梅には「私にとっての玉虫姫はお前だ」とか、女人が悲しむのは見たくない、というのが信条です。このあたりの人物設定は「源氏物語」の光源氏像から着想を得ているのかも、ですね。

詳しくはここで↓  第4巻あらすじ

【応天の門】4巻 ネタバレ&みどころ 平安歴史ミステリー
平安歴史ミステリー【応天の門】第4巻ネタバレ&みどころです。業平が反藤原の集いに道真を招きますが、「群れているだけで何かをした気になっている集まり」に過ぎないと、痛烈に批判。道真と業平の関係に隙間風が吹き始めます。その頃、都の大路を百鬼夜...

「応天の門」 在原業平はワトソン?

主な登場人物

「応天の門」のサブ主人公・業平は38歳。道真がホームズ役として推理を繰り広げていく際に、ワトソン役として行動面の補佐が多い役回り。相変わらずのモテ男ブリですが、やや中年の翳りもそこはかとなく見え、そこがまた魅力かも? 女性遍歴数多あれど、その人生に大きな影を落としているのは、やはり高子姫でしょうね。

密会シーン

まぁ、だいたい登場からして密会シーンです。方違えで不在の夫・中将殿の奥方と、いきなり中将が返って来たのではないかとビクビクしつつの密会、しかし怖いのはこの奥方の六条殿の一言。

「いつもどなたのことを考えていらっしゃるの?」

お互い危険を冒しての密会なんだから「うわの空で抱くんじゃないわよ」と(笑)。そういうのって、敏感に伝わっちゃうんでしょうねぇ。そのあたり、業平も胸に刺さるものありでしょうか。「女人は怖い。美しく柔らかいだけかと思えば、刃物のように真実を突きつけてくる」 すでに、彼の胸には高子姫という棘が深く突き刺さっているのですから、柔らかいだけの相手を選っていくしかないんでしょうけど。

業平はむろん妻帯者です。妻は紀名虎の子有常の娘。紀名虎の娘・静子が生んだ文徳天皇の皇子惟喬親王と大変に親しかったそうですが、文徳天皇は惟喬親王を皇太子にしたかったのに藤原良房に押し切られ、良房の娘・明子の皇子(後の清和天皇)が皇太子となり、やがて紀氏などの有力氏族が退けられていくわけです。

「忘れては夢かとぞ思ふおもひきや雪ふみわけて君を見んとは」古今集の中にある業平の和歌。皇位継承の望みが立たれた惟喬親王が出家すると、こんな歌を送って慰めています。

詳しくはここで↓ 第1巻あらすじ

藤原高子との駆け落ち

そういう紀家と縁が深い立場でありながら、藤原高子と駆け落ち騒ぎを起こしたんですね。

「いいの、連れて行って 業平」「どこへでも 連れて行って」(第2巻)

このシーン、好きですね~。11歳の高子姫と29歳の業平。『今昔物語』や『伊勢物語』などに高貴な女性との密通事件として残されています。

「むかし、男ありけり。女の、え得まじかりけるを、年を経てよばひわたりけるを、からうして盗みいでて…」有名な「伊勢物語」六段。この時、深窓の令嬢であった高子姫は「露」を見たことがなく、業平に「あれは何?」と問いかけるシーンがあります。鬼に喰われてしまった姫(実際は兄たちに連れ戻された)を嘆き悲しみ、業平が詠んだ歌が「白玉かなにぞと人の問ひし時 露とこたへて消えなましものを」 私もあの露のように、はかなく消えてしまえばよかった…。11歳と29歳の恋物語…

その思い出を「月やあらぬ春や昔の春ならぬ我が身一つはもとの身にして」(古今集巻十五)と詠んだ業平、これは高子姫の入内を知った後に詠まれたとか。手の届かぬ所へ行ってしまった高子への、絶唱といえる名歌ですね…。

「応天の門」がちょうどその10年後、高子姫の入内の話題で盛り上がる設定ですね。十年たってほとぼりも冷めたし、若い帝なら何とでもなると、藤原良房は虎視眈々と次の帝、さらにその次の帝の外戚となるべく暗躍中。

業平と高子は今も密かに文を交わす中なのですが、厳しい軟禁生活の高子に会う術はありません。道長の女官・白梅や道長から、わずかに様子を伝えきき… 「高子殿、笑っておられましたよ」という道長の言葉に深い慰めを得るシーン、これもいい表情してますよね。高子姫からの唐墨の匂いを嗅いだりして、さすが匂いフェチ男。一度嗅いだ女性の香の匂いは忘れないとか。まぁ、昔は香と体臭がその人独自の香りを放っていたんでしょうから、忘れがたいものであったに違いありませんが。

詳しくはここで↓ 第2巻あらすじ

高子姫との一瞬の遭遇。宮中での騒動の時に、見過ごしにすれ違う瞬間、お互いを認め合うシーン。設定では高子姫21歳となっていますから、あの駆け落ちから10年後の遭遇です。切なさ満載です。

私的には、入内して後の密会なんて、今後に期待しちゃうんですが。光源氏だって后の藤壺女御のもとに通ってましたし。逢わせてあげたい高子姫と業平殿!

詳しくはここで↓ 第5巻あらすじ

空約束の常習者

さて、出奔した道真を探して明石に行けば行ったで、そこには昔通った女・清川に遭遇。しかも、清川が仕えていた姫に通う業平と深い仲になった、という設定。「いつか迎えに行く」なんて空約束までしていた業平、言い訳しようとするとすかさず、バッサリ。

「私がお慕いしていたのは、気まぐれで移り気で、お美しい少将様。どうか私の憧れを奪わないでくださいまし」

「つまんない男にならないでよね」って一言で釘刺し。やはり女人は過去よりも今なのですね~。

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女の恨みもやむなし

憧れの山吹の姫様を振った憎き奴というので下男に付け狙われ、とんだ呪い騒動を引き起こされた業平ですが「女人がらみとなると思い当たる節があり過ぎて、皆目わからぬ」そうで、道真から「ほんとに最低!」と言われます。

当の山吹の姫はと言えばしっかり別な男の子を産んでいたりして、この時代男も女も奔放に恋の駆け引きをしていたんですね。

『三代実録』では業平の伝を「体貌閑麗,放縦不拘にして,略才学無く,善く倭歌を作る」と記しています。美男で放縦な業平は官人として必要な漢詩文の学識はないけれど、良い和歌を作ったそう。紀貫之は「業平はその心あまりてことばたらず。しぼめる花のいろなくて,にほひのこれるがごとし」と、業平の余情豊かなことを讃えました。

詳しくはここで↓ 第4巻あらすじ

【応天の門】4巻 ネタバレ&みどころ 平安歴史ミステリー
平安歴史ミステリー【応天の門】第4巻ネタバレ&みどころです。業平が反藤原の集いに道真を招きますが、「群れているだけで何かをした気になっている集まり」に過ぎないと、痛烈に批判。道真と業平の関係に隙間風が吹き始めます。その頃、都の大路を百鬼夜...

イタリア男並みの愛想よさ

幼いころから美童として騒がれ、今もどこへ行っても人気で、ばば様にだってモテてしまう(笑)。白梅の憧れの公達でもありますね。通りをゆけば大騒ぎ。声をかけられれば、にっこり。

白梅には「私にとっての玉虫姫はお前だ」とか、女人が悲しむのは見たくない、というのが信条です。このあたりの人物設定は「源氏物語」の光源氏像から着想を得ているのかも、ですね。

詳しくはここで↓  第4巻あらすじ

【応天の門】4巻 ネタバレ&みどころ 平安歴史ミステリー
平安歴史ミステリー【応天の門】第4巻ネタバレ&みどころです。業平が反藤原の集いに道真を招きますが、「群れているだけで何かをした気になっている集まり」に過ぎないと、痛烈に批判。道真と業平の関係に隙間風が吹き始めます。その頃、都の大路を百鬼夜...

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